集合住宅

子供の頃から、ずっと集合住宅が好きなのだ。アパートや団地のそばを通るたびにベランダの洗濯物や窓辺の明かりに郷愁を誘われた。今は、自分も集合住宅に住んでいても相変わらず集合住宅に惹かれる。東京の同潤会アパートには何度も足を運んだ。江戸川アパートメントが一番好きだった。都心の真ん中にありながら、植物と一体化したお化けのような建物だった。集合住宅に惹かれるのは、一戸建てよりも仮の住まいという印象があるからだと思う。窓越しのコップや洗剤や階段の三輪車や、生活感がむき出しなのに、そこを所有してる訳で無いというのは、この世に生まれて、去っていく人の生そのもののようで、その寂しさが好きなのだと思う。