懐かしい記憶

ふとした拍子に子供の頃の記憶が蘇る。気分や気配といった曖昧なものではあるけど、それが自分を幸せにしてくれる事は間違いない。ちょうど季節の変化と結びついていて、今頃ならばゲイラカイトを抱えて土手を走った時の気分や、つららが日差しに溶けるのを見ていた光景など、なんの脈絡もなく思い出す。
そういえば、子供の頃、今にして思えば不思議な程あらゆるものが懐かしかった。特に、ある特定の場面に(絵画や映画のワンシーンなど)泣きたいくらい惹かれる事があった。あの強い情緒は何だったのかと今も思い出す。
たぶん子供は、経験による記憶の割合が少ないので、人類共通の無意識のようなものを記憶のように心に残しているという事ではないかと密かに思うのです。(同じような事を古井由吉氏のエッセイでも読みました。若い作家が老成した作品を描ける理由としてでしたが)あの強い郷愁は、過去に生きた誰かの想いだったのではないかとか、ラチのあかない事も考えます。
こういう微妙に不思議なことは、誰に話されることもなく皆心に置きざりにするのでしょうね。聞いてみたい気がします。